知られざる携帯サウンドの中身 - 小塩 広和 (コンポーザー)
作曲・・・だけじゃない!
みなさんこんにちは、ZUNTATAコンポーザー小塩でございます。
ここに登場するのはクリエイターズインタビュー以来ですね。
前回はインタビュー形式だったので、話題は既に決められていたわけですが今回は自由に書いて良いとのことなので、徒然なるままにサウンドのお仕事について書いていきたいと思います。
私のお仕事は一応名目上(笑)コンポーザーということになっていますが、作曲だけをしている訳じゃないんですよ。むしろ作曲がメインじゃないことの方が多い位でして。(汗)
携帯サウンドは基本中の基本!
私が以前に担当したプロジェクトに業務用カードゲーム「ダイノキングバトル」の携帯電話用ゲームへの移植というのがありまして。
せっかくなんでゲームセンターに置いてある実機で遊んでみようと会社帰りにタイトーのゲームセンターに寄ったら、ついつい延々と遊んでしまいまして、店員に訝しそうに監視されてしまったのも良い思い出です。(実話)
BGMがなんか変!

「ダイノキングバトル」の話が出たところで、今回は携帯電話用ゲームサウンドの制作についてちょっとだけ語ってみたいと思います。
まず最初はBGMから考察してみましょう。
携帯ゲームのBGMというのは当然ながら携帯電話に内蔵されている音源を用いるわけです。
しかも、ある程度限られた発音数で作らないといけないので、必要な音を選定することからまず始まります。
また、携帯電話のCPUやメモリは限られていますから、当然サウンドにも割り当てられるCPUパワーやメモリも限られてきます。
し・か・も、この内蔵音源はキャリアや機種毎に違ったりします。
だから「auでちゃんと作った曲がDocomoでちゃんと鳴らないぃぃ!」なんていうことはザラです。
つまり同じ曲でもキャリアや機種ごとに、適切に音量や音色を調整したバージョンを別個に作らなければなりません。
うーん大変!こういう地味だと思われがちな細かい苦難を経て、ZUNTATAサウンドのクオリティは保たれている訳です。
効果音が鳴りません!!
さて、次は効果音ですがこれも内蔵音源で作ることもあります。
しかしながら最近は家庭用ゲームと同じように生の音をサンプリングしてそのまま使えることも増えてきました。
でも、調子に乗って家庭用ゲームと同じように作るとリテイクを食らいます(汗)
やはり、いくら端末が進化したと言っても、業務用ゲーム機・家庭用ゲーム機等と比較すると、当然出来る事は限られてきます。
何が言いたいのかというと、スピーカーがとても小さく、なかなか思った通りの音を鳴らす事が難しいのです。
だから、普通の業務用ゲームや家庭用ゲームと同じノリで効果音を作ると大概きれいに鳴りません。というか聞こえません。
クリエーターズインタビューでは、ひぐらしの鳴き声を綺麗に鳴らすことに苦労したことを書きましたが、あれはその最たる例ですね。ひぐらしの声でなくとも上手く鳴らない音は沢山あります。
そうした苦難を経て、スピーカーの特性を知る事がいかに大事かを思い知らされるわけですね。
何言ってるかわかりません!!!
最後にボイスです。
ボイスはもう内蔵音源でどうこういうレベルじゃないですから、効果音と同じように生音をサンプリングして使います。
しかしながらこれも収録音声をそのまま使うと、何言ってるかわかりません。
1つの理由は効果音と同じくスピーカーが小さい事です。
特に男性の声は音程的に低い事もあり、低音が出にくい携帯スピーカーの影響をもろに受けてしまうので注意が必要です。

さらにボイス固有の問題として、ダイナミクス(=音量の上下)が大きいというものがあります。
詳しい説明は避けますが、同じ音量で鳴らしてもボイスは効果音に比べ音量が小さく感じられます。
しかし、ゲームにおいて効果音よりボイスの音量が小さいなんてことは許されるわけがありません(涙)
そこはコンプレッサーとかいう魔法を使って何とかするわけですが(笑)、この魔法は扱いが非常に難しく、習得するまではかなりの経験値が必要となります。
しかもそう言うことに限って先輩は教えてくれないし・・・
こういう涙ぐましい戦闘の末に会得した経験値によって携帯のボイス品質は成り立っているわけです。
因みに前々回の大隅君のコラムで紹介のあったオトdePONですが、これの音声部分は私が担当しています。涙ぐましい音質アップの成果を感じていただければ幸いです。
まあ、ともかく携帯のボイスを経験することで、ボイスが強敵である事とそいつに有効なコンプレッサーという魔法を習得するわけですね。
というわけで
今回は携帯サウンドについてあれこれ書いてみました。
次回は業務用ゲームとか家庭用ゲームのサウンドとか小塩の私生活について書いてみようと思っています。今後ともよろしくお願いします。
あ、そうだ。ファンレター下さい(笑)