ZUNTATA iTunes アルバムレビュー vol.01

ファイターズインパクト

ZTTL-0003 「FIGHTERS' IMPACT」
1996年11月29日 発売

iTunes(R) Store 各曲 150円 / 全曲一括購入 1,500円
http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewAlbum?id=201802937&s=143462
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ファイターズインパクトとカイザーナックル

 iTunes storeで配信中のZUNTATAアルバムから毎回1枚づつ取り上げてレビューする「ZUNTATA iTunes アルバムレビュー」。第1回目はサイバリオン、メタルブラックなど、その独特の音楽センスでファンを魅了するコンポーザー「Yack.」(やっく)氏の「ファイターズインパクト」(以降"F.I.")をご紹介します。

 Yack.氏がサウンドを手がけた格闘ゲームというと「カイザーナックル」(1994)があり、サウンド的な方向性で言うとこのF.I.はそれの発展形であり完成形と言えるのではないでしょうか。

 基本的に1キャラクターに対して1曲づつBGMが割り当てられているという一見オーソドックスな作りなのですが、Yack.氏が各キャラクターから引き出したサウンドは普通の格闘ゲームで聞かれるようなものとは一味違います。

 実際、Yack.氏がゲームサウンドを作るときにはいつもキャラクター設定や世界観の書かれた資料をPCの横に貼って、「ぬおー」とか「おぎょー」とか言いながら打ち込みしていたのをよく覚えています(笑)

 前身である「カイザーナックル」が割とメロディーとビートがはっきりした「陽」のサウンドとすれば、このF.I.のサウンドはキャラクターのバックグラウンドを感じさせるような抑え目のメロディラインと全体に流れるドライでシャープなグルーヴから「陰」と言えるかもしれません。

2つのサウンドトラック

 F.I.のサウンドが普通の格闘ゲームのサウンドとは一味もふた味も違う特徴は、その独特のメロディーやグルーヴだけではありません。

 すでにアルバムを聞いた方はご存知かもしれませんが、このアルバムは13曲目以降で雰囲気がガラっと変わります。まるで2つの異なるゲームのサウンドトラックが1枚に入っているように。

 それもそのはず、このアルバムの1~12曲目と13曲目以降では使用される状況が全く異なるのです。

 実は12曲目までは対戦プレイ時専用BGMで13曲目以降は1人プレイ時専用BGMというサウンド仕様になっているのです。要するに人と対戦プレイしている時と、一人でゲームを進めている時で全く違うBGMが流れるような仕組みになっているということです。

 ここでまた「陽」と「陰」の話になるんですが、実はこのF.I.のサウンド自体も「陽」「陰」2つの対比がコンセプトになっていると考えられます。

 対人プレイ時の勢いを重視したサウンドを「陽」。比較的ビートは抑え目で、アンビエント的なアプローチが主となっている一人プレイ用サウンドを「陰」と考えるとこのアルバム全体の聞き方がグッと面白くなります。

 このゲームのサウンドのすごい所は、このように1つのゲームに全く異なる2つのサウンドトラックが入っている点と言えるわけですが、もっとスゴイことはこの仕様は誰に決められたわけでなく、Yack.氏自ら提案したことなのです。まあその結果、しょっちゅう「ぬおー」とか「おぎょー」とか言ってだいぶネタ出しに悩むことになったようですが(笑)

 アルバム自体もこのゲームのサウンドが持つ2面性を強く意識して構成してあるので、ぜひ1曲目から順番に最後まで聞いてほしいですね。

ばびーのオススメ!

M8 : Be Cool

アコースティックギターとハーモニカが絡み合ってくる2'10"あたりからが特に燃えます。

M14 : 道-Road-

ZUNTATAライブなどでも演奏されている、F.I.のテーマといえる楽曲です。メロが切ない!

M7 : 光と闇-Curse-

タイトルの通り、F.I.のサウンドコンセプトを端的に表現している楽曲と言えるでしょう。

Reviewer Profile

石川勝久(Katsuhisa Ishikawa)

著者近影

通称 “ばびー”
サウンドエフェクトひと筋十ン年。代表作に「メタルブラック」「ダライアス外伝」「サイキックフォース」「武刃街」などがある。近年はサウンドディレクターも兼任することも多い。

今回紹介した「ファイターズインパクト」では効果音制作と、12、13曲目の制作に携わっている。