ここではスペースインベーダーエクストリームオーディオクラスタに収録される楽曲をクリエイター自らの言葉で解説していこう
収録曲解説3: Intro #5/rEpulse mE/Executor/Rebel Worm/Zero Hour/Intro #6/Crackle
今回は残りのステージ5のBGMとスタッフクレジット/対戦時の曲について解説してみたいと思います。
ステージ5ではバリエーションステージがA-Dの計4つもあるため、僕(COSIO)と前回登場いただいた鈴木貢氏に加え、数々のゲームサウンド制作に長年携わってこられた鈴木康行氏に参加いただき、よりバリエーション豊かなステージBGMを目指しました。
M-13 Intro #5 M-14 rEpulsE mE
開発初期の頃から最後のステージは新宿をベースモチーフとした雑多で派手なイメージにすると決めていました。実際、アートディレクターのくろやなぎ氏は新宿でロケハンを行いムービーを製作したそうです。
雑踏とスペースインベーダーというキーワードからどういう曲にしようか随分悩みましたが、「新宿」というベースモチーフとムービーの中の「KABUKI」と書かれているネオンが妙に印象的でしたので和風な高速テクノという変わった曲風で製作してみました。
曲名はステージ1の「invAde yOu(=お前を侵略する)」と進入してきたインベーダーに対抗するという意味をこめて「rEpulsE mE(=私を拒絶せよ)」としました。
実はこの曲の製作途中に思いついたフレーズが「ここ(新宿)では人もインベーダーも区別がつかない」で、Introの核となる一節になっています。
僕も時々新宿に行くのですが、あのすごい人ごみを目の当たりにするたびに「この中に、もしかしたらスペースインベーダーがいるのかもな」とふと思ったりします。皆さんもそんなことないですか?(笑)
ちなみにくろやなぎ氏の真似をしたわけではないのですが、Introのバックで流れている雑踏の音は実際に新宿でフィールドレコーディングしてきたものです。
次の2曲は先ほど紹介した鈴木康行氏にお願いしました。
鈴木康行氏より頂いたコメントを掲載します。
M-15 Executor 景観、人、流行等全てがスピーディに移り行く街を表現してみました。 M-16 Rebel Worm インベーダーを無限に増殖していく「ワーム」になぞらえて曲名としました。 一見きらびやかな街に潜む無機質な怖さや猥雑さ、混沌。 淡々としていて且つ眠らない街というイメージです。
文:鈴木康行
次の曲は鈴木貢氏の作品です。
鈴木貢氏より頂いたコメントを掲載します。
M-17 Zero Hour 洗練された都会をイメージしつつ、洗練されすぎないある種ヒューマンな雰囲気を出せるよう音色等で工夫しました。
文:鈴木貢(SOUNDWAVE)
M-18 Intro #6
このIntroだけは今までのIntroと異なり、オーディオクラスタの製作にあたり総括として付け加えました。このIntroで書いたとおり「新たなExtreme」はもうすぐそこに来ているのかもしれませんよ。
最後のスタッフクレジットと対戦用のBGMですが、これも鈴木貢氏にお願いしました。
この曲は当初ステージ5の曲として作曲してもらったのですが、結果として対戦用のBGMとしてすごくマッチしているということでそちらに採用したという経緯があります。
以下鈴木貢氏よりコメントです。
M-19 Crackle HIP HOP風のリズムとアナログ的シンセで未来都市の片隅、多国籍で雑多な路地裏のような雰囲気を意識しました。
文:鈴木貢(SOUNDWAVE)
オーディオクラスタの発売が決定してから約1ヶ月、このClusterBlogではサウンドシステムの解説から曲の解説まで行ってきましたが、本日(2008/3/19)オーディオクラスタのリリースを以って最終回にしたいと思います。
今までこのブログを楽しみに読んでくださった皆様本当にありがとうございました。
この続きは是非CDで楽しんで貰えるとうれしいですね。
よかったら聞いた感想などをお寄せください!
それでは、新たなゲームで再び皆様にお会いできることを楽しみにしています。
収録曲解説2: Intro#3/Regress/Progress/Intro#4/Gradation/Harum/Shatter
今回も前回に引き続き僕、COSIOがステージ3とステージ4のBGMについて解説していきたいと思います。
M-6 Intro #3
M-7 Regress
M-8 Progress
ステージ3のコンセプトは開発当初より比較的明確でした。
まずゲームの全体の流れからこのステージはいわゆるブレイクになるようにと当初の企画会議で決めていましたし、アートディレクターのくろやなぎ氏から頂いたムービーもそれに合うような自然的な流れを感じさせるものでした。
ですから曲調としてはゆったりめなアンビエントに近いものにしています。
さらに、ムービーが「海」をモチーフにしていましたのでそれから連想して「生命の源」。
そしてインベーダー=侵入者をウイルスに見立て「生命はウイルスによって進化した」という生物学の一節を全体のモチーフとしました。
そういうわけで、よく注意して聞いてみるとお分かりになると思いますが一部の効果音は海に関連したものにしています。
余談ですが、3-AがRegress(=退化)、3-BがProgress(=進化)という曲順には意味がありまして、ステージ2をある条件でクリアすると3-Bに行けるのですが、それをプレイヤーの「進化」になぞらえ上記のような曲順にしています。
M-9 Intro #4
ステージ4の曲は鈴木貢氏(SOUNDWAVE)に参加して頂き、ムービーと企画会議でのコンセプトから無機的なビル郡をイメージして作曲をお願いしました。
Introでは4-AのGradationというキーワードを核に、すでに戦いによって無機的な廃墟と化した戦場に再び訪れる戦いの夜明けというイメージを書き表してみました。
以下鈴木貢氏より曲の解説です。
M-10 Gradation インベーダーが仮想空間に浮遊しているようなシュールなイメージで作りました。立体感を感じて頂ければと思います。
M-11 Harum Drum 'n Bassの高速リズムにメカニカルで少しフリーキーなフレーズを乗せることで電脳世界の雰囲気を表現してみました。
M-12 Shatter 重くインダストリアル感のある4つ打ちです。ノイジーなギターやパーカッションで近未来の都市のような雰囲気を意識しました。
文:鈴木貢(SOUNDWAVE)
収録曲解説も残り1回となりました。アルバムを聞きながら読み返すとより深くスペースインベーダーエクストリームのサウンドに浸れると思いますよ!
収録曲解説1: ExtrEmE/Intro#1/invAde yOu/Intro#2/Outbreak
こんにちはZUNTATAのCOSIOです。
Audio Clusterの発売が近づいて来ましたね。
前回まではスペースインベーダーエクストリーム(ニンテンドーDS版)のサウンドシステムを解説しましたので、今回からはいよいよBGMの内容について解説していきたいと思います。
今回はアルバムのトラック1~5の内容を一気に解説してみたいと思います。
M-1 ExtrEmE (MENU)
スペースインベーダー30周年記念と言うことで、スペースインベーダーの再来=歴史の繰り返しというイメージからミニマルなテクノ調の曲にしました。
気がついた方も多いと思いますが、スペースインベーダー再来ということで曲の所々にオリジナルのスペースインベーダーの効果音を入れています。
M-2 Intro #1
M-3 invAde yOu (Stage1)
アルバムでは各ステージのBGMのトラックの前にIntroというトラックを入れています。これはそのステージのBGMを作る上でのイメージを文章にして、サイドストーリー風に構成したものです。
アルバムには英語音声で収録していますがブックレットの方には日本語訳も載せてありますので是非ご覧になってみて下さい。
さてステージ1のBGM「invAde yOu」ですが、この曲は2007年のTGS出展を皮切りにプロモーションムービーやオフィシャルサイトでも繰り返し流されていたので耳にしていた方も多いと思います。
当初からスペースインベーダーエクストリームのサウンドは「インタラクティブサウンド」や「BGM一体型効果音」といった新システムを導入しようとしていましたので、それを効果的に表現するにはどんなサウンドが良いだろうと試行錯誤を繰り返した末に出来たのがこの曲です。
ですから、コンセプト云々というよりはサウンドシステムから生まれた、ある意味もっとも僕らしい曲であると言えます(笑)
結果としてこの曲のおかげで、サウンドシステムの仕様とこのゲームに対する楽曲制作スタイルも固まりました。
そういうわけでスペースインベーダーエクストリームのサウンドの方向性を決定づけた曲でもあります。
曲名はスペースインベーダーの襲来をイメージしてInvade Youとしました。
M-4 Intro #2
M-5 Outbreak (Stage2)
この曲はアートディレクターのくろやなぎ氏から頂いた画面イメージ(ステージ2のバックグラウンドムービー)を元に作りました。
頂いたバックグラウンドムービーの印象からダイナミックで開放的な曲を目指しましたが、それにプラスして全体に哀愁感を漂わせるように作っています。
これは、開放的なステージとは対照的にやっていることは人間とインベーダーの紛れもない戦いなのだということを曲に込めたかったためです。
Introの文章では「空とはこんなにも碧く哀しかったのだ」と書いていますが、これはまさにステージ2全体に流れる開放的なイメージと戦いとのコントラストを表しています。
● 小塩広和(COSIO)タイトーサウンドチームZUNTATA所属。作曲・編曲・サウンドエディター・プログラマーなど幅広い顔を持つ。今回はスペースインベーダーエクストリームのサウンドディレクターとしてサウンドシステムの提案からステージBGMの作曲まで、トータルなサウンドデザインを担当。
● 鈴木康行(YASUYUKI SUZUKI)ゲームメーカーでのサウンド開発業務を経て1998年よりフリーでの活動を始める。 主な業務は家庭用ゲーム機、携帯ゲーム機用ソフトの音楽、SEなどのサウンド制作。 主な作品はモンスターキングダム・ジュエルサモナー(PSP)、カスタムビートバトル ドラグレイド(ニンテンドーDS)など。
● 鈴木貢(MITSUGU SUZUKI)ギタリスト・コンポーザーとしてテレビ・ラジオ・ゲーム・イベント等の音楽制作を多数手がける一方、ヘヴィーロックバンド「RareDrug」(www.raredrug.com)でGuitarとProgrammingを担当。代表作、バトルギア3(アーケード)、OVER G (xbox360)、 アルカノイドDS(ニンテンドーDS)。
※ ニンテンドーDSは任天堂の登録商標です。