スペシャル

「エレベーターアクション リターンズ」作曲者 渡部恭久スペシャルインタビュー

iTunesで「エレベーターアクション リターンズ」サントラ配信開始!

ジャケット画像

「エレベーターアクション リターンズ」のサウンドが
17年ぶりに復活!

1995年に発表されたアーケード向けアクションゲーム「エレベーターアクション リターンズ」

そのBGMを全て収録したサウンドトラックがiTunesなどの配信専用アルバムとして登場。

今回はそのサウンドトラック配信を記念して、作曲者である渡部恭久氏に「エレベーターアクション リターンズ」サウンドの秘密について伺った。

インタビュアー:石川勝久(ZUNTATA)


渡部恭久 スペシャルインタビュー

映画的+インタラクティブ

石川「エレベーターアクションリターンズ オリジナルサウンドトラック」(以降:エレアク)iTunes配信記念といたしまして、今日は作曲者である渡部恭久さんに色々とお話を伺おうと思います。今日はよろしくお願いいたします!

渡部 よろしくおねがいしたします

石川 あ、普通の人みたいだ(笑)

渡部 あーちと待った。実際に曲かけながらやろう。完全に頭がそっち行ってへん(笑)

石川 そうしましょう~。

石川 エレアクなんですが、これ、もう17年前になるんですねぇ。

渡部 今、昔のCD注:1995年発売のサイトロンレーベル版CD)取り出してブックレットを読んでるんですが。なかやま(元ZUNTATAの古川典裕氏)のうさんくさい評論文が(笑)こんなんあったあったって感じやわ(笑)

石川 ゲーム自体も演出がアクション映画ぽい雰囲気があったので、当時は映画のサントラっぽいアルバムにしようとしたんですよね。

渡部 うん、もう相当昔の話だからかなり忘れちゃってる部分もあるんだけど、 たしか「映画やるか!」ってノリで音付け出した覚えがあるです。

石川 アルバムだけでなく、ゲーム自体も映画っぽい音付けに?

渡部 そうねー、面ごとではなくて、同一面でポイントポイントで曲変えたるかー、映画っぽくするならって。

石川 劇伴(映画音楽)ぽい感じを意識したという感じですか?

渡部 厳密にはちょと違うかも

石川 といいますと?

渡部 映画は映画である意味、一方的に製作側のレールに乗せて魅せる訳じゃない?ゲームならではのやりかたってのがあると思うんよ。プレイヤーさんの行動に合わせて演出が変化していく、みたいな。

渡部 もちろん、映画的な手法、とは銘打ってはいるけどあくまでそれは「近い手法」であって、そのものではないという、ゲームならではの演出って感じを目指したのかも。

石川 今時な言葉で言うとインタラクティブな音の演出を目指したという感じですか

渡部 今風だー(笑)

渡部 そうねー、そこまで斜に構えてはいなかった・・・いや、あの当時だから斜に構えてたかもねー。これでどーよ、みたいな(笑)

サウンドのトータルバランスは常に心がけている

石川 渡部さんは、当時から毎回何か違ったことをひとつは盛り込みたい!という感じでしたよね

渡部 おー、そだねー。おいらのクセかなー、もうそれは。

石川 そしてどんどん作る曲数を自分で増やしていくという(笑)

渡部 うおー(笑)でも新しい事しようとするとどうしても、普通の曲数とか演出じゃ収まらないでしょう。

渡部 なんだろ、もう相当前の話なのだけど、会社入ってゲームに対して今後は『音』で関わるって覚悟を決めた時に、「聞いて人となりの物語が想像できればなー」とかぼんやり思う所からはじまって。

石川ふむふむ

渡部 んで、いろいろと担当して自分なりにアイデアを毎回変えたりスキルっぽいのも独学で身に付けて「おーし、いけるかぼちぼち」とか思ってた時期かもしれんね、エレアクの時とかって。

渡部 ほれ、おまえさんはおまえさんで「だったら効果音単体でもクリエィティブな事できるかも?」とか意気込んでた時期やん?

石川 そうですね。効果音の専門職としてのアイデンティティを模索していた・・・と言うとアレですが、効果音でも自分というものを出したいと思うようになってきたころです。

渡部 うん、そうならんほーがおかしい(笑)

石川 効果音といえば、エレアクの曲に足音とか歓声といった効果音がBGMの素材として使われていますよね。

渡部 多分、さっき言うてた「演出とか物語性」を出す為に一番シンプルな方法を選んだんだと思う。今でこそそういったギミックは当たり前、いやむしろ過去の産物になっちゃってるんだけど、多分その頃は「これがいっちゃんいい方法なんじゃー」とか言うてたんちゃうかなー(笑)

石川 ゲーム中の効果音と混同するかとも思ったんですが、実際にはそんなことはなかったですね。いいスパイスになっていると感じました。

渡部 ああ、それはもちろん、いっしょくたにならない様なの選んだもの。楽曲、SE、演出込みで流れた際のトータルバランスは常に心がけてるから、多分あの当時もそれはやってたはず。

石川 そういえば毎回サウンド調整も時間かけていましたねぇ。

渡部 エレアクのソフト屋さん(ゲームのプログラマー)がね、おいらがルナーク注:1990年発表のアクションゲーム)の開発時に他のソフト屋さんと一緒になって細かい音の調整やってるのを見てて、そのやりとりがすげえうらやましかったっぽくて。

渡部 「今回(エレアク制作時)難儀なサウンド関係の依頼が来ても全部やるから、なんでも言ってくれ」って言うてくれたんよ。

渡部 おーわかったー ほいじゃ好き勝手やるー!て言うて、ロードマップみせて「これはここ、あれはそこ、んでこの音はこいつがここ差し掛かったときで・・」とか全部渡したら・・・

渡部 めっちゃ顔に縦線入ってた(笑)

石川(爆笑)

石川 なるほどー。プロジェクトメンバーの協力の賜物なわけですね。あの音の演出は。

渡部 うん、結局ゲームなんで、企画、ソフト、音、全部同じとこ向いてないとおもろい事でけんよねー。

おじーちゃんおじーちゃん(笑)

石川 さて、今回のアルバムなんですが、前のサイトロン版では複数の楽曲がシームレスにつながっていたり、効果音でつないだりする演出をしていたんですが、今回はマスターテープから起こしなおして1曲づつ別に収録しました。

渡部 おー、そやねー。ある意味前に出たやつとは違ってして新しいかもー。

石川 今回、サイトロン版のようにつなぐか、1曲づつにするかちょっと悩んだんですが

石川 CDだと全体の流れで聞かせることができるんですが、配信ものは1曲ごと購入できてしまうので

渡部 おお

石川 今回は1曲ごとにスポットを当ててリリースすることにしました。

石川 で、分割すると曲名がない曲がいくつかあったので、作曲者である渡部さんご本人に新たにつけてもらいました!

石川 どうですか。17年前の自分の曲に新たなタイトルをつけるというのは?

渡部 おじーちゃんおじーちゃん、って感じでした。

石川 え?(笑)

渡部 何年前やと思ってんねん!(笑)当時の感覚思い出すのにえれー時間かかって、それやのーてもタイトルとか楽曲創るのより時間かかるのに。わしゃ、あん時何考えてたやろ・・おじーちゃんおじーちゃん、って感じですよ(笑)

サウンドとキャラ特性

石川 ちなみに今回のアルバムで渡部さん的にオススメの曲ってありますか?

渡部 んーんーんー。お奨めって、毎回返答に困る質問やよなー

石川 私はやっぱり昔も今も「BLOW UP」ですねー

渡部 おー

石川 流れで聞くとさらにグッとくるんですけどね。単曲だともったいない。

渡部 メインテーマ曲がゲームの一番最後の最後に出てくるという(笑)

石川 そうそう

渡部 うん、そこも狙いだったよーな

石川 ゲームの最初ほうのステージでは抑えた感じで始まって、最終面で大メロディアス大会。

渡部 うははは

石川 そうそう。BLOW UPで思い出したんですが

渡部 おー

カイザーナックル
「RISE UP TO THE STAR」

(作曲:渡部恭久)

石川 カイザーナックル、エレアク、ファイターズインパクトと、トランペットがメロをやる曲がよく登場するんですが。これはこの当時トランペットにはまっていたとか?

渡部 や、たぶんそれは、『トランペット=外人』ていうイメージじゃないかなー(笑)

石川 えー(笑)

渡部 トランペット使った曲というと、カイザーナックルはマッコイやん?ファイターズインパクトではシレーヌだし。

ファイターズインパクト
「Angel Beat」

(作曲:渡部恭久)

渡部 で、エレアクのではカート(エレアクのキャラクター)を意識。

石川 な、なるほどーーー!

渡部 キャラに配置させてるだけやで(笑)

渡部 だから、FEEDBACK ROMANCEではイーディ重視なイメージできらきらさせてるし

石川 ふむふむ

エレベーターアクション リターンズ
「FEEDBACK ROMANCE」

(作曲:渡部恭久)

渡部 音色でキャラの特性を表現するみたいなやり方はカイザーナックル辺りから実験してた時期かも

渡部 聴覚要素で、「この音が鳴ったら誰それが出る」っていう記号的なアプローチはあるとユーザーが安心するからねー

石川 そのキャラ特性を音に生かすやり方は、私も効果音を作るのに影響受けましたよ。カイザーで渡部さんから伝授してもらって、サイキックフォースでは多用しました

渡部 ああ、なんかそういえば当時そんな相談受けた覚えが(笑)

ぜひ全曲まとめて聴いてほしい

石川で、話は戻りますがオススメの曲は?(笑)

渡部 多分それぞれに思いいれあるやろうから、「これおすすめっす」っていうのはちと無いわー。

石川 単曲ダウンロードじゃなくて、アルバム一括で聴け!と(笑)

渡部 それだ!(笑)

渡部 いやでもまじめに、こういうのって単体だと魅力半減どころか、意味がわからんやろうから、全部聞いてほしいです(笑)

石川 今回は1曲ごと独立して収録しましたが、やはり通して聞くと味わいがまったく違うので

渡部 うん、流れで創ってるからねー

石川 というわけで、みなさん、ぜひアルバム一括で購入を!(笑)

石川 それでは最後になりますが、渡部さんからこの記事をご覧の皆様にメッセージを

渡部 えっと、今後ともよしなに!

石川 今回もあっさり!!(※)

渡部 ひいいい


※ ちなみに前回の対談はこちら!



渡部恭久 (Yasuhisa Watanabe)

株式会社タイトー在籍時、数々のゲームサウンドを手がけた後、フリーコンポーザーに転向。ゲームサウンドを中心としながら様々なジャンルと懐の広い曲調で精力的に活動中。

代表作:「カイザーナックル」「ファイターズインパクト」(共にタイトー)、「ボーダーダウン」「旋光の輪舞」(共にグレフ)、他多数
●TwitterID:@Feldherrn