サウンドワールド・オブ・サイキックフォース


サウンドワールド・オブ・サイキックフォース

「サイキックフォース」シリーズというと、これまではどうしてもキャラクターや対戦についての話が先に来てしまい、サウンドの話は比較的少なくなってしまう傾向にあったような気がするのですが、「サイキックフォース2012」が2012年末にNESiCAxLive版として14年ぶりに復活した今こそ、サイキックフォースのサウンドについて色々と語ってみたいと思います。


オーケストラヒットやギター、そしてねちっこい(笑)ベンドを使ったシンセリードを多様したDr.Haggy(ZUNTATA)によるケレン味溢れる楽曲は、キャラクター性を前面に出したサイキックフォースの世界観にこれ以上ないほどにマッチしていました。彼の作り出すストレートながらも切ない気持ちにさせるメロディセンスはこのサイキックフォースによって開花し、「Burning strom(バーンBGM)」「Tears & flow(マイトBGM)」などの名曲の数々が誕生しました。

彼は影山ヒロノブ氏が歌う、サイキックフォースの歌も全て作っているのですが、中でも私が名曲として皆さんオススメしたいのは「サイキックフォース2」(プレイステーション)のテーマソング「The legend ~a dying hero's story~」(フルバージョン)です。この曲はなんとサビに到達するまで3分もかかるというもったいつけっぷりなんですが、その分サビの盛り上がりはサイキックフォースソング史上最大じゃないでしょうか?残念ながらCD(「サイキックフォース2 エクストラソングトラックス+」)は廃盤となっていますが、もし中古ショップなどで見かけたらぜひGETしてください!


さて、私の大好物である(笑)音源に関する技術的なお話も少し。

初代サイキックフォースに関しては、ゲームシステムボードの関係で、当時タイトーで主流となっていたフルPCMによる音源チップを使うことが出来ず、古くから使っているFM音源チップ(YM2610)を使わざるを得なかったのですが、今思えばこれが逆に功を奏したのかもしれません。FM音源によるソリッドな音色が、ハードの関係でまだ若干表現力の乏しかったポリゴンキャラクター達に"色"を加えていたように思えます。もちろんこれは当時、曲のデータ化(注1)に協力していただいたYack.こと渡部恭久さんによる力も大きいと思います。

(注1)データ化:楽譜に書かれた音符を、音源チップ鳴らすための特殊なデータにして入力していくこと。特殊なノウハウを必要とする。

2012ではようやくZOOM社のフルPCM音源チップが使えるようになり、格段の進化を遂げたグラフィックに負けないクオリティのサウンドが実現しました。 この音源チップは「レイストーム」「Gダライアス」などの名作ゲームにも使われているもので、12bit AD-PCMで16bit品位のサウンドを鳴らすことが出来て、各チャンネルごとにセンド量を調節できるリバーブやコーラスなどのデジタルエフェクトも搭載・・・まあとにかく素晴らしい音源だったと思っていただければいいです(笑)

「Burning storm」(初代バージョン)

「Burning storm」(2012バージョン)

(作曲:Dr.Haggy)

その音の違いを実際に聞いて確認していただくために試聴を用意しましたので、ぜひ比較してみてください。同じ曲ですが(若干アレンジは異なります)、だいぶイメージが違って聞こえるのではないでしょうか?


私の担当である効果音に関して最も苦労したのはもちろんこのゲームの肝である各キャラクターの超能力技の音。キャラクターによってそれぞれ属性が分かれているので(バーンは「火」、ウェンディーは「風」など)その属性を連想させるような音になるように苦心したのですが、中でもパティの属性「音」、刹那の属性「闇」の表現には悩まされました。パティはエミリオの表現と被らない様にしながら「女性の歌声」をモチーフにすることで何とか形になったのですが、問題は刹那の「闇」をどう表現するか。うーん、闇といえば何?→地獄じゃね?→地獄といえばメタルじゃね?→メタルと言えば歪んだギターの音だ!という恐るべき論法で(笑)ディストーションギターの音をモチーフにすることになったのです。今度プレイする際には、ぜひその辺りを意識しながら聞いてみてください。

そしてサイキックフォースと言えば、ボイスキャストの方々による熱演も忘れてはいけないでしょう。特に「キース」「ゲイツ」を担当した津久井教生さん、「バーン」「ウォン」を担当した真殿光昭さんのお二人には全く正反対のキャラクター性を持つ二役を好演していただきました。そうそう、二役と言えば2012に出てきた「黒(洗脳)エミリオ」と「白エミリオ」という、同一人物ながら正反対の性格のキャラを演じられた高山みなみさん。ドリームキャスト版では黒エミリオと白エミリオによる口論(独り言?)のシーンがあるのですが、それをワンテイクで見事"一人二役"を演じきった演技力には当時アフレコスタジオで非常に感動した覚えがあります。


サイキックフォースは私のサウンドディレクターとして初仕事ということもあり、色々と若気の至り的な部分も多々あるのですが(笑)それも含めて非常に愛しい作品です。プレイ未体験の方は「サイキックフォース2」はPlaystationStoreのゲームアーカイブスで、「サイキックフォース2012」はアーケードのNESiCAxLiveで今でも遊べますので、ぜひサウンドにも注目しつつプレイしてみてください。

株式会社タイトー サイキックフォースサウンドディレクター 石川勝久(ZUNTATA)




イベント情報


祝!サイキックフォース2012[NESiCAxLive版]稼働記念トークライブ開催決定!!

  

 対戦格闘ゲーム界に衝撃を与えた『サイキックフォース』とは一体何だったのか。当時の対戦格闘ゲームの常識を覆す斬新なシステムとグラフィック。2D格ゲームと3D格ゲームがせめぎ合う対戦格闘ゲームシーンに、第三の可能性を提示した傑作が2012年に突如復活。  当時の対戦格闘ゲームシーンを振り返り、 今だからこそ語れる開発秘話を交えながら、『サイキックフォース』を徹底検証するトークライブ。


“サイキッカー集団ノア緊急集会2013”

  • 日時:2013年2月9日(土)
  • 開場 18:00/開演 19:00
  • 会場:新宿ロフトブラスワン
  • 入場券:ローソンチケット【Lコード:34899】にて販売
  • 前売りチケット 2,000円 当日チケット 2,300円
  • 司会:DJ急行
  • 主催:株式会社エンターブレイン
  • 協力:株式会社タイトー
  • ※本イベントについてのお問い合わせは株式会社エンターブレインまでお願いします。

    ◆第一部 対戦格闘ゲーム業界における『サイキックフォース』とは?

     対戦格闘ゲームブーム当時の歴史を振り返り、「サイキックフォース」がどのような位置づけのゲームなのかを分析。1991年に登場した「ストリートファイターII」が、後に出てくる対戦格闘ゲームにどのような影響を与えていったのか。それによる2D格闘の進化、そして3D格闘の登場。システムの多様化と、各メーカーが差別化の模索とチャレンジの中、1996年に登場した「サイキックフォース」は一 体何者なのか。当時の対戦格闘ブームを掘り起こしながら「サイキックフォース」に迫る!

    <ゲストコメンテーター>

    石井ぜんじ(元ゲーメスト編集長)/猿渡雅史(元アルカディア編集長)/他、元開発スタッフの参加も調整中

    ◆第二部 『サイキックフォース』の開発に秘められたもの

     初代からDC版の2012まで、当時の開発スタッフをゲストに迎えた制作エピソード。原案であった 「サイキックファイアー」に始まり、「カイザーナックル」の反省を踏まえたゲーム作り。3D空間をステージとすることによるコマンド入力やコンボの考え方、サドンデスなど、枚挙に暇がない独創性の数々。AOUショーでのデビューからロケテスト、そして稼働。その後のユーザームーブメントの捉え方、その後『EX』の制作、『2012』では初のウルフ基板の採用など、様々な秘話が明らかに!

    <ゲストコメンテーター>

    神村武(タイトー)/石井ぜんじ(元ゲーメスト編集長)/猿渡雅史(元アルカディア編集長)/他、元開発スタッフの参加も調整中

    ◆第三部 深淵なる『サイキックフォース』の世界観

     対戦ツールが持て囃される時代において、世界観設定にこだわった本作。アニメ作品に引けを取らない 卓越したキャラクターメイキング。当時ではまだ珍しい、アーケードゲームのドラマCD化やノベライズにまで広がった世界観を、設定面、サウンド面、そしてボイスアクターなどの切り口から検証。ゲス トには、同タイトルのサウンドを担当したタイトー石川氏を始め、キャラクターボイスを担当した声優の方々を迎え、『サイキックフォース』の魅力の語り尽くす!

    <ゲストコメンテーター>

    石川勝久(タイトー)/津久井教生(声優:キース&ゲイツ役)/福島央俐音(声優:レジーナ役)/きみやしげる(アニメ演出家、ドラマCD脚本)/他、声優・元開発スタッフの参加も調整中

    (C)TAITO CORPORATION 1995 ALL RIGHTS RESERVED. (C)TAITO CORPORATION 1996 ALL RIGHTS RESERVED. (C)TAITO CORPORATION 1995, 2012 ALL RIGHTS RESERVED.
    ※上記は予定であり、予告無く変更する可能性があることをご了承ください。



    サイキックフォースシリーズ サウンドスタッフ プロフィール


    Dr.Haggy (作曲)

      

    タイトーサウンドチーム"ZUNTATA"の『異端児』として数々のゲームのサウンドを手がける。その熱いメロディラインと激しいリズムには独自のファンも多い。サイキックフォースシリーズでは全てのキャラクターBGMやテーマソングの作曲を担当する。ZUNTATA内のパフォーマンスユニット"ZUNTATA-J.A.M."においては、メインコンポーザーとして「電車で電車でGO!GO!GO!」(プレイステーション版電車でGO!テーマソング)「Good-bye ハルマゲドン」(アルバム「スペース遣隋使」収録)などの"迷曲"を数多く生み出す。

    代表作:『サイキックフォースシリーズ』『バトルギア2』『電車でGO!』(テーマソング「電車で電車でGO!GO!GO!」「LOVE特急こまち」)『武刃街』『ゾイド・インフィニティ』『EXIT』


    石川勝久 (サウンドディレクター、効果音)

      

    タイトーサウンドチーム"ZUNTATA"の効果音クリエイターとして20年以上に渡り数々のゲームに関わる。サイキックフォースシリーズでは、サウンド全体のイメージをまとめるサウンドディレクターとしても活躍。また、Dr.Haggy、KAMATYと共にZUNTATA内のパフォーマンスユニット"ZUNTATA-J.A.M."を結成。メインボーカルも努めている。

    代表作(効果音):『メタルブラック』『ダライアス外伝』『サイキックフォースシリーズ』『武刃街』『ダライアスバースト』


    サイキックフォースシリーズ ディスコグラフィー


    サイキックフォース アーケードサウンドトラック(1996.10.11)

    サイキックフォース1作目のアーケード版サウンドトラック。タイトーのオリジナルCDレーベルである"ZUNTATA RECORDS"の記念すべき第1弾でもある。アーケード版のBGMに加えて、このアルバムだけの特別ユニット"E.S.P. DOLLS"によるソニアBGMのアレンジソングや、電車でGO!の歌でおなじみのユニット"ZUNTATA-J.A.M."によるウォンBGMアレンジソングを収録。



    サイキックフォース オリジナルサウンドトラック(1996.11.29)

    サイキックフォース1作目のプレイステーション版サウンドトラック。アーケード版のアレンジBGMに加え、影山ヒロノブが唄う、アルバムだけのオリジナルソング「HEAR I AM BURNING NOW」を収録。





    サイキックフォース エクストラソングトラックス(1997.02.28)

    影山ヒロノブが唄う、プレイステーション版サイキックフォースのオープニング、エンディングソングのロングバージョンをこのアルバムのために新規収録。さらにこれまでリリースされた2枚のサウンドトラックに収録されていた歌を再収録したソングアルバム。







    サイキックフォースパズル大戦 オリジナルサウンドトラック(1997.09.21)

    サイキックフォースと、タイトーの大人気パズルゲーム「パズルボブル」が合体したゲーム「サイキックフォース パズル大戦」(プレイステーション)のサウンドトラック。ZUNTATAのメンバーが数多く参加したニューアレンジのBGMと影山ヒロノブが唄う主題歌とエンディングをフルコーラスバージョンで収録







    サイキックフォース2012 オリジナルサウンドトラック(1998.08.21)

    サイキックフォース2012のアーケード版サウンドトラック。ZUNTATA RECORDS初の2枚組みアルバムで、各キャラクターのBGMから未使用曲、そしてゲーム中の効果音や音声まで全て収録している。ZUNTATA-J.A.M.によるアレンジソングも2曲収録。





    サイキックフォース2012 オーディオドラマVol.1(1998.08.21)

    脚本・演出にゲーム本編でもストーリーアドバイザーとして参加している木宮茂氏を迎え、ゲームのオリジナルキャスト総出演で送る、ZUNTATA初のドラマCD。

    ゲーム開発スタッフ監修による完全オフィシャルストーリー。







    サイキックフォース2012 オーディオドラマVol.2(1998.09.21)

    サイキックフォース2012、オフィシャルドラマCDの完結編。マイトとパティの運命は? ノア再興に懸けたカルロの想いは? そして、リチャード・ウォンの思惑とは・・・?





    サイキックフォース2012 アレンジサウンドトラック(1999.03.21)

    サイキックフォース2012ドリームキャスト版のサウンドトラック。アーケード版のBGMをZUNTATAのMar.、Yack.、Karu.、SHU、Mu-Nakanishi、TAMAYOという錚々たるメンバーによってフルアレンジ。ZUNTATAメンバーによるアレンジバトルを十分に堪能できる。




    サイキックフォース2 エクストラソングトラックス+(1999.09.22)

    サイキックフォース2012に数多くの新要素を加え、プレイステーション用ソフトとして生まれ変わった「サイキックフォース2」。「玄真」「ソニア」「ブラド」の新アレンジBGMとこのゲームのために新たに制作されたオープニング、エンディングソングを収録。