ZUNTATAクリエイターズ インタビュー:小塩広和氏

第1回

タイトーサウンドチームのニューフェイスとして、ニンテンドーDSゲーム「私のハッピーマナーブック」(2007年4月5日発売)、 携帯アプリ版「ひぐらしのなく頃に」(Yahoo!ケータイ、iモードにて配信中)、 そして今話題の“モスキート音”をフィーチャーした携帯コンテンツ「大人ニ聞コエナイ?着信音」を手がけた小塩広和氏に、その幅広い制作スタイルや表現方法について聞いた。

女心って難しいなぁってぼやいてました(笑)

● まずは4月5日に発売される「私のハッピーマナーブック」についてお聞きしたいのですが、今回小塩さんはこのゲームでは何を担当されているんですか?

ゲーム全体のサウンドディレクターと効果音全般、そしてBGMの一部を担当しました。タイトルで流れる主題歌も私が作曲したものなんですよ。
他のBGMに関しては「ロストマジック」のなかやまらいでんさんに依頼しました。
入社して初めてのコンシューマーゲームのサウンドディレクターだし、もちろんDSなんて開発経験もないので最初はどうなることかと思いましたが、チームの皆さんがとても好意的で割と自由にやらせてもらえたので助かりました。

● なかやまらいでん氏は言わば小塩さんにとっては“大先輩”に当たるわけですが、今回組んでみていかがでしたか?

らいでんさんが作る曲はとてもメロディが印象的なんです。特にDSなんかは音数の制約が結構あるのですが、少ない音数で印象的に聞かせるにはどうしたらよいかを熟知していらっしゃいますよね。さすが大先輩って感じです。
後、私がサウンドディレクターとしては駆け出しで色々わからない点もあったのですが、様々なところでフォローして下さって助かりました。この辺りもさすが先輩と思いましたね。
余談ですが、私とらいでんさんは顔が似ているので社内では兄弟だと言うことになっているのですが、今回組んでみて改めて血のつながりを感じましたよ(笑)

● なるほどそう言われてみれば似てる・・・かも(笑) ところで今回のサウンドのテーマのようなものはありましたか?

このソフトはいわば「女性の女性による女性のためのゲーム」というところがコンセプトなんですよ。企画の主要メンバーが全員女性なんですね。なので、一般の女性受けするようなカジュアルさやポップさ・・・もっと具体的に言うと「Cafe」というのが大きなコンセプトになっています。
曲だけでなく効果音も「Cafe」を意識したものを入れ込んでいるんですよ。ゲームをお買いあげ頂いた方は是非注意して聞いてみて下さい。
逆に今まで作っていたようないわゆる「ゲーム」っぽい曲や効果音は全部ボツにされてしまって・・・最初の頃は女心って難しいなぁってぼやいてましたよ(笑)

「私のハッピーマナーブック」(タイトー)
「私のハッピーマナーブック」(タイトー)
ハード:ニンテンドーDS
ジャンル:マナーと教養
人数:1人用
発売日:2007年4月5日
CEROマーク:レーティングA(全年齢対象)
希望小売価格:3,990円(税込)

● テーマソングである「Happy Smiling♪」はタイトーでは珍しいタイプのポップチューンですね?これはどのような経緯でできたのでしょうか。

Babiさんにのせられて(笑)
それは冗談として(笑)開発中にちょっと息抜きのつもりで映画を見に行ったんですよ。その映画で流れていたボーカル曲がちょうどゲームのイメージにぴったりだったんです。さっそく帰りにサントラを買って翌日にディレクターに聞かせたら「いいねぇ」と。そんな感じでタイトル曲はボサノバのテイストが入った、女性ボーカルのポップチューンで行こうという風に決まりました。
余談ですが、容量の関係でボーカル曲を入れられるとわかったのが開発終盤に近い頃で、それからプロデューサー口説いて、曲作って、歌詞を依頼して、ボーカリスト探して、レコーディングしてってだいたい1ヶ月なかったんです。
今思うと数々の奇跡の上に完成した曲なんですね。

● 作詞はこのゲームの監修もされている西出博子先生が担当されたんですよね

そうなんです。
マナーゲームのタイトル曲であることと女性の観点を重視した歌詞にしたかったので、ゲームの監修をしていただいた西出先生に頼んでみたらどうかということになり、思い切ってお願いしてみたんです。
西出先生自身は曲の歌詞を書くなんて初めての経験だったらしいのですが、先生ご自身の知り合いの音楽家の方も協力してくださってキャッチーな中にも先生の思いが込められた素敵な歌詞が出来上がりました。
ちなみにその知り合いの音楽家というのがイギリス在住の方なのです。だから歌詞の英語は本場仕込みなんですよ。

「モスキート音」はFM音源のアルゴリズムを利用しています。

モスキート音:大人ニ聞コエナイ?着信音

測定の様子1
測定の様子。
測定の様子2
16~20kHzの高周波の音が出ているのが分かる。
測定の様子3

● EZwebおよびYahoo!ケータイで配信している「大人ニ聞コエナイ?着信音」についてなんですが。これは簡単に説明するとどんなものなんでしょうか。

人間の耳は一般的に年齢と共に高い音が聞こえなくなっていきます。なので、若い人には聞き取ることが出来ても、年を取った方には全く聞こえない高さの音というのがあるんですね。
「大人ニ聞コエナイ?着信音」ではその性質を利用して、若い人だけに聞こえる着信音を作っています。

この音自体は少し前からいわゆる「モスキート音」としてネット上などで話題になっていまして、我々としてもどうにかこれをコンテンツに出来ないかと思っていました。
しかしながら、「このような極度に高い音は携帯のスピーカーでは再現できないのではないか」というのが大方の見解でして、実際に普通のPCMをベースにした着うた形式では相当な高レートでないと再現が出来ませんでした。
それでは再生できる端末が限られてしまい、コンテンツとしては不適当です。

● そうですよね。着うたになってしまうと高い周波数は削られてしまうことが多いですね。

ええ。しかし研究を進めていたところ、au、SoftBankの端末に内蔵されているFM音源のアルゴリズムを利用して、通常の3倍の高さの音を出すことでモスキート音が作れるのではないかと言うことに気がつきました。

● ということは「着うた」ではなく「着信メロディ」で実現しているということですか?

そうです。そして実際そのアルゴリズムで実験的に音を作ったとき私には全然音が聞こえず、実験は失敗かなと思っていたんです。ところが、たまたまその時私の席に遊びに来ていた同僚が「このキーンとした音はどこから鳴っているんだ?!すぐに止めてくれ」と言ったのを聞いて初めて実験が成功していたことに気がつきました。後でオーディオアナライザー(測定器)で測定したところ、確かに17kHz近辺のモスキート音が鳴っていました。自分でも気がつかなかったのですが、私の耳は同僚より老化していたようですね(笑)

● ユーザーのサイトなどで公開されている、いわゆる「モスキート音」と違って、メロディになっていたりするところが非常に面白いと思うんですが、これを作ろうと思ったきっかけは?

タイトーから出すものですから、ただ単に鳴らすだけでは面白くないと思って(笑)
モスキート音はもちろんそれだけでも楽しめるものですが、言ってしまえば「聞いて終わり」なんですよ。
その先、モスキート音でどうやってお客さんに楽しんでもらえるのか? こんな風にモスキート音が鳴ったら楽しいなぁとか、こういう風にモスキート音を使ったら楽しいなぁということを色々と想像しました。モスキート音自体は面白い素材なので結構楽しみながら作りましたよ。その中のいくつかをコンテンツとして現在配信しています。

「モスキート音のような素材をどうやって調理してエンターテイメントとして提供するか」というのが我々クリエイターの使命だと思っています。モスキート音ってこんなに楽しいものだったんだというのが伝われば幸いです。


第1回 第2回 第3回